足場の強度と法規制・耐用年数や最大積載荷重、法改正について解説

工事現場をはじめ、イベント会場の設営や、施設のメンテナンスなど、さまざまな場面で使われている足場。中高層ビルでの作業にも使われているので、それだけの強度があることは確かですが、やはりいつまでも強度を保つことなど不可能です。この記事では、足場の耐用年数や最大積載荷重について考えていきます。

足場の強度

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工事現場をはじめ、イベント会場の設営や、施設のメンテナンスなど、さまざまな場面で使われている足場。中高層ビルでの作業にも使われているので、それだけの強度があることは確かですが、やはりいつまでも強度を保つことなど不可能です。ここからは、足場の強度を「耐用年数」「最大積載荷重」の2点で説明していきます。

足場の耐用年数

一般的な鋼管製の足場は、さまざまな種類の足場部材と組み合わせて使い、正しく組み立てることで、その強度や安定性、そして安全性を保つことができます。しかし、足場を組み立てる環境によっては負荷がかかるだけでなく、風雨にさらされることもあるので、いつしか本来持っていたはずの強度を発揮することができなくなります。ただ、繰り返しさまざまな現場で組み立てられては解体される足場には、耐用年数を決めること自体が現実的ではありません。そのため、傷ついたり、折れ曲がったりした部材がないか日頃からよくチェックして、そのような部材は必ず使用を中止します。実際、労働安全衛生規則においては「事業者は、足場の材料については、著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはならない」としていますので、指定された足場の組立て等作業主任者には、これを点検する責任があるわけです。このように職務により足場のクオリティは保たれるようになっているのですが、耐用年数については、法では何も定められていません。メッキ技術の進化により、以前よりも長期間の使用に耐えられるようになったことや、使用の条件次第で不良になってしまうこともあるからです。
ただ、何も規定がないと、長い間繰り返し使用された足場の強度は下がる一方です。ただでさえ、物は時間が経てば劣化していきます。そこで厚生労働省では「経年仮設機材の管理に関する技術指針」を発表し、現在では仮設工業会がそれに準拠した基準を設定して、強度の落ちた不良足場部材の流通を防いでいます。この中では修理、整備、廃棄を目視で判定するための基準、一定期間使われた部材に対する性能試験の実施、などの内容が含まれています。そのため、仮設工業会が認定した場所でメンテナンスが行われている足場に関しては、基準はクリアしていると考えてかまいません。

足場の最大積載荷重

ビケ足場には、最大積載荷重が定められています。これは仮設工業会が定めているもので、作業床の許容積載荷重を根拠にしています。その値は、幅400mmの作業床で200kg、幅240mmで150kg。これらの値は安全を考慮して定められているため、実際には値以上の強度を持っていると考えていいでしょう。
仮設工業会が定める最大積載荷重は、ビケ足場1スパンに対し200kg以下で、さらに1構面400kg以下となっています。(低層住宅の場合)
ビル工事などの足場は壁つなぎが住宅よりも効果的に使われるため、最大積載荷重を作業床の許容積載荷重と同じ重さにしています。しかし、同じスパン内では同時に積載可能な層を2層(各200kg)だけとしています。
最大積載荷重は、作業床の許容積載荷重とは異なります。小規模な住宅工事と、大規模なビル工事でも、ご紹介したように違いがあり、仮設工業会では機材に応じて最大荷重を決める安全率を調整。より高い安全性が求められる機材には高い安全率を適用し、安全な製品作りに役立てています。

足場はどこまで高く組み立てられる?

中高層ビルの壁面に組まれた足場を見かけると、いったいどのくらいの高さまで足場は組むことができるのか知りたくなりませんか?特に最近は、低層住宅用の足場としてよく使われていたビケ足場はビルの足場にも扱いやすさから採用されています。実は仮設工業会は、このビケ足場の使用を独自の基準を定めることにより限定していました。当初は一般住宅などの工事に限定されていた基準も、現在では高さ45mの足場でも使えるようになっているので、「どこまで高く組み立てられる?」という問いへの回答は45mということになるでしょう。組み立てようと思えば、さらに高く組み立てられることは間違いないのですが、安全あっての足場ですので、現実的になるしかありません。

足場関連の法規制強化について

足場の強度に関わるトピックをご紹介してきましたが、ここからは足場の強度と安全性に関わる法規制の強化についてご説明します。

死亡事故の多発が規制強化の理由

建築現場では、年間100人以上の人が転落や墜落事故により亡くなっています。これは業界全体における死亡者の半数弱を占める数で、転落や墜落事故をなくすことが国としての課題であることは間違いありません。もちろん、これまで国も業界も事故撲滅のために努力を重ねてきました。しかし、それでも防ぎきれなかったからこそ、さらなる法改正が行われ、規制を強化しているのです。事故はルールを守っていたとしても100%防げるものではありません。ただ、ルールを守っていなかったがために失われる命があってはいけません。
現在のところ、最新の法改正は平成27年に施行されたものです。この改正が重点を置いているのは「教育」「監督責任」「足場の構造」そして「作業の方法」になっています。

・作業に従事する人への教育
平成27年の法改正後、足場の組立てや解体作業に従事する人は、特別な教育を受けることが義務づけられました。これを修了してからでないと、これらの作業を行うことはできなくなったのです。この目的は、作業に従事する人の安全意識の向上。ただ、現場によっては専門ではない人間が足場を組み立てることもあり、このような業者の意識改革がもっとも重要なのかもしれません。
・監督責任
足場の監督責任とはいっても、この監督責任は仕事を依頼する側の監督責任です。これまでは仕事を発注したら、あとは現場任せでしたが、今後は仕事の依頼者に点検を行うことが義務づけられたのです。地震(震度4以上)、大雨などが発生した場合、その後は仕事を依頼した人が点検しなければなりません。足場を組み替えた場合も、その後に点検の義務が発生します。
・足場の構造改革
これまでの規定に加えて、作業床と建地の間にできる隙間を12センチ未満にしなければならなくなりました。また、法改正により手すりの設置が義務づけられることになりました。これまでは手すりを外しても安全帯でカバーすることができましたが、現在では手すりのない場所への人の立ち入り自体が禁止されています。
・作業方法の改革
転落や墜落事故は、すでに組まれた足場で発生するのではなく、組立てや解体の途中で発生しています。とび職の人たちは、組立てや解体作業を行っている際も、安全対策をとっていますが、そもそも足場がない(足場のための足場はない)ため、安定しない場所で作業しなければならなかったわけです。高さが2メートル以上になる場合は必ず手すり、もしくは安全帯などを使用すること、そして作業床の幅も40cm以上確保しなければならなくなります。
現場の安全は、足場作業に関わる人々全員の願い。皆が統一された安全意識を持って、実現へ向けて努力していくことが大切です。